とある歴クラ見習い審神者の備忘録

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【仮集計】オタク層の日本刀への興味関心に関するアンケート

アンケートを実施したきっかけと目的

きっかけ

ゲーム「刀剣乱舞」および関連するメディアミックス作品により、実際の刀剣に対する興味関心はブームと呼べるほど高まっています。
ただし、その影響を大きく受けているのはおもに美術館・博物館であり、愛好団体や、刀剣商や刀剣関連職人への影響は限定的です。
このことから、当該の関係者から、「刀は高いため、女性は購買に至らない」などという発言がなされることがあります。

しかし、日本刀とほぼ同じ価格帯で、マンガをきっかけにブームと呼べるほど売れたものがあります。
ロードバイクです。
同じ属性の人間に対しほぼ同価格帯のものが、一方はブームと呼べるほど売れ、もう片方は限定的な影響しかないとしたら、その要因は価格以外のところにあります。
実際のところ、刀剣愛好団体や刀剣商の行動について「それでは定着するはずがない」「それでは買うわけがない」と思い当たるふしはいくつもあります。
その心当たりを、狭い範囲の感覚的なものではなく、広く確認したものに変え、記録したいと思ったのがアンケート実施のきっかけです。

目的1.記録することそのもの

このアンケートの実施目的は大きく3つあります。
一つ目は、結果を記録することそのものです。このアンケートの結果はWebで公開し、紙媒体の作成を行う旨を利用目的として記載しました。
紙媒体は、国会図書館に納めたいと思っています。
これにより、当ブームに対する当事者側からの記録が一つ、世に残ることになります。
感覚としてあったものを、データと合わせて記録に残す、これが最初の目的です。

目的2.マーケティング資料としての提供

一時期に比べれば刀剣乱舞のブームは落ち着いています。
しかし、人数としては相応のボリュームは残っていますし、オタク的興味の対象が他に移った場合でも、関連して調べた対象に対して一定の興味を持ち続けている層はいます。
また、刀剣乱舞から実際の刀剣について調べる層、つまり作品そのものの外に興味を持つ層は、他のジャンルに移動しても、同じような行動をとるでしょう。例えば歴史ジャンルや、時代劇アクションジャンル等をきっかけに刀に興味を持つ層は一定数出ると考えます。
興味対象の関連性、興味から実現に至らなかった層の阻害要因等、アプローチのための資料として役立つ部分があると考えます。

目的3.詳細アンケートのための予備アンケートとして

今後、対象を絞り込んだ上で異なるアンケートを行うことを想定しています。
このアンケートは、そのための予備アンケートとしての性質も持っています。

弱虫ペダル流行によるロードバイクブームとの類似点・相違点

類似1.ブーム当事者層の属性

女性オタク層を中心としたブームです。
時期も大きく離れてはおらず、購買力などに大きな差はないと考えられます。
なお、オタク層の興味関心対象は、その時期によって大小さまざまなものが並立しています。
弱虫ペダルから刀剣乱舞に移った層も多いですが、どちらも経験していない層、弱虫ペダルは通ったが刀剣乱舞に興味のない層、弱虫ペダルをジャンルとして追いかけていなかったが刀剣乱舞を好む層など、ジャンルの変遷は様々です。先に金を使ったために購買行動が起こらなくなったと考える人も出るかもしれませんがそれは誤りです。

類似2.初心者向け価格帯

ロードバイクの初期導入費用は、初級機で10万~30万程度、少し背伸びをして中級機まで見ても50万程度です。
上級者向けの機種は一台100万円ほど。
更に好みや乗り心地などによって部品のカスタムを行いますが、上級者向けであればホイールだけで100万円近くするものもあります。

日本刀は、一番上を見ればきりがないですが、刀剣市や日本刀店で比較的目につきやすい場所にあるものは10万円前後~300万円程度が多いように思います。
初心者向けのアドバイスを見ていても、初めにすすめられるのは、10万円前後の小品~60万円程度で見どころのある作品くらいの範囲であるようです。
少なくとも、初心者が購入を検討する対象の価格帯は同一であるといってよいでしょう。

類似3.入手できるのは「キャラクターが持っているそのもの」ではない

自転車は、毎年新しいモデルが登場します。キャラクターが持っている自転車で「あれだろう」と特定されるものもありましたが、全く同じものの入手は極めて困難です。
同じブランドかつ同じ色というだけでも難しい場合が少なくありません。コーポレートカラー以外はカラーバリエーションも毎年変わるし、目指す色が上級機にしかない場合もあります。
(上級機は高価なだけでなく、軽量化の代償として丈夫さに難がある。また乗車姿勢も初心者には負荷が大きいため、最初からの購入は勧められない)
同じブランドの自転車に乗るというだけでも、身長による制約が生ずる場合もあります。

刀剣の場合、ゲームに登場するのは現存するものでも唯一無二の名刀が大半であり、同じ作者の別の刀であっても途方もない金額というものが多いです。

どちらについても、「キャラクターが所持するそのものが入手できるわけではない」点は同一といえます。

相違1.性差によるハードルの性質差

ロードバイクにおける性差のハードルは、身体的な性差によるものが明確にありました。
規格が欧米男性を基準としており、最も小さいフレームの適用目安身長が165cm~としているブランドも少なくありません。最も小さいフレームの目安身長155cm~と表記されていても、男女では標準的な手足のバランスに差があり、実際には乗れない場合もあります。
2012年に発行された『のりりん』というマンガの4巻には、身長150cm強の女性が、通常規格品に乗ることが困難だとジュニアロードを勧められて憤慨する場面が描かれています。
私がロードバイクの世界を見ていたのは2014年-2017年頃の名古屋エリアです。初めのころは目安身長145cm~という通常規格の女性用モデルはめったに見ないものでしたが、だんだんと当たり前に並ぶようになっていった感覚があります。
ただし、その頃はいわゆるダサピンク現象が起きており、需要を探りきれていないことがうかがえました。実際、周囲で買った層も、身長面の問題がないのであればデザイン面から女性用でないモデルを選んでいることが多かったです。(なお、今はデザイン面は改善しているように思います)
また、具体的な改善タイミングは思い出せないですが、少し安価な入門機に用いられるTIAGRAグレードのブレーキレバーについて、女性の小さな手では握りきれず危険だった時期があり、「安価な選択肢を用いる」ことに対するハードルもありました。

日本刀の鑑賞の世界において、身体的性差によるハードルはそこまで大きくありません。
丁寧な扱いのために負荷はかかりますが、標準的な刀の重量は1kg未満です。
筆者の握力は左右共に18kg程度であり、標準的な女性と比べても極めて低い数値です。
しかし体調が悪い場合や特別重い刀剣は別として、手に持って行う通常の刀剣鑑賞を行うことは可能です。
見聞きする女性特有のハードルは、女性蔑視やハラスメント等、社会的性差によるものが大きいように思います。

相違2.情報メディアの種類・アクセス難易度

競技用自転車は、取り扱う自転車雑誌が複数あり、ウェブメディアも存在します。
インターネットで情報発信するショップ、メーカー、個人が多く、情報収集しやすいです。

日本刀について、著名な定期刊行物は会誌であり、一般流通していません。
店ごと、あるいはイベントごとのカタログ等もあるものの、入手手段がオープンになっていません。
刀剣画報など新興の雑誌は、意欲的ではありますが、現時点においてはクオリティが安定していないように思えます。
また、インターネットでの発信もあまり大々的とは言えないように思います。

相違3.入手費用・維持管理の明瞭さ

自転車の世界は、店によって多少の価格差はあるものの、自転車雑誌等で標準的な参考価格が示されています。
フレーム職人へのオーダーという手段もありますが、これもウェブサイトなどで、このようなモデルであればいくらから、よくあるオプションはいくらというように目安が示されていることが多いです。
メンテナンスについても、自身で行うべきメンテナンス内容、頻度、用具や店に頼むべきメンテナンス内容、頻度、金額目安などはイベントや雑誌の特集等で比較的ひんぱんに話題に上ります。

刀については、猟銃と誤解した情報を発信する方もあり、情報が錯そうしているように見えます。
(猟銃は刀剣類と比較して厳重な管理を要し、所持のための負荷が大きい)
職人さんたちも、価格帯の発信に積極的でない方が多い印象です。

実施方法とアンケート対象集団の偏りについて

実施方法について

アンケートはGoogleフォームを利用し、回答依頼にはTwitterを用いました。
実施期間は2021/1/4~2021/1/31。1771件の回答を得ました。
前述のとおり複数の目的が存在するため、アンケートの設問は、全体としてはあいまいな内容になっています。
こちらの意図が回答の方向付けにならないようにすることを重視しました。

仮集計の性質について

分析のメインは自由記述の分析ですが、時間がかかるため、簡単に集計できる項目のみを先にまとめたものです。
今回の仮集計では、数値はgoogleフォームに表示された数値をそのまま転記しています。

アンケート対象集団の偏りについて

オタク層が最も興味関心を持つ対象は、あくまでマンガ・ゲーム・アニメそのものが主体です。
通常、当該作品そのものだけに興味を持つ層が裾野として最も数が多く、作品のファンの一部が「作中に登場する何か」に興味を持つ層となります。
好きなキャラクターについてバックグラウンドを知りたい、あるいは、作品を元にした創作のための材料として知りたいというのが主であると思います。
(特に女性オタク層は、キャラクターの関係性に着目することが多く、そのためのスパイスとして史実・事実まで手を伸ばす層が少なくない印象です)
当然ながら「作中要素から離れた何か」にまで興味を持つ層はそこまで多くはないと考えます。
しかし今回は、このような層の分析をすることが主目的ではありません。

筆者は、「刀剣乱舞から入った層に」「実際の刀に関する情報を」発信している立場です。
twitterは、それぞれのユーザが好みに合った情報を発信する相手を選ぶ形でつくられるネットワークであり、情報は同質の相手から同質の相手へと流れやすい特性をもちます。
そのため、このアンケートは当該の内容に興味を持つ層へ届いた可能性が高いと考えられ、サンプルには偏りはあります。
また、このアンケートの実施時には「設問の意図がつかめない」という反応もいくつか見られました。
それによりアンケート回答をとりやめている層がいることも否定できません。

ただし、このアンケートの目的の一つは「マーケティング資料として」です。
そしてこのマーケティング資料を参考とする方として想定される対象は、アニメ・ゲームなどを目的に日本刀に興味を持つ層を顧客候補とする方々です。
アニメ・ゲーム作品だけに興味を持つ層は、当該の目的においては顧客候補ではありません。
アンケートの目的の上で、この偏りは問題にならないものであると考えます。

アンケート結果(簡易)と設問意図

回答者属性

回答者属性は、クロス集計のための項目として設けました。
このブームの対象層は若い女性と言われています。
性別については、男女で課題が異なる可能性が考えられるため、確認する項目に含めました。
ここで問題となるのは肉体的な性別でなく社会的性別であるため、設問は「生活上の性別」としました。

回答内容/パーセント/件数

  • 女性:94.9% 1681件
  • 男性:2.8% 50件
  • ひみつ:2.3% 40件

(回答総数 1771件)

結果は、想定どおり大半が女性となりました。
男性も、統計上傾向の確認を行うのに十分な50件という回答を得ることができました。
ただし、このアンケート結果の分析において、男性の回答は「女性と同様の課題があるか、それとも課題が異なるか」を見るためのデータとして用い、男性を軸とした分析は行いません。
男性オタクと女性オタクには共通する部分もありますが、明文化されない慣習など異なる文化も多いため、少ない回答件数から女性当事者である筆者が語るというのは不適切と考えます。

年代について、「若い女性」と一言で言っても、実態として私が交流する相手だけでも十代から五十代まで幅広いです。
ただし、今回の分析において年齢を確認する目的は、従来層(老年男性)と属性差があることを明確にするというもの、購買力の差が明確にあるものを分離してクロス集計できるようにするというものです。
女性の平均年収は、就労後は年代による差があまりなく横ばいであり、細かく聞く意義は薄いと考えたため、学生/就労年齢/定年以降という分類にしました。

回答内容/パーセント/件数

  • 学生:16.3% 288件
  • 就労年齢:83.7% 1482件
  • 定年以降:-% 1件

(回答総数 1771件)

上記に加えて購買力や行動に大きな影響を与えそうだと考えたのが、扶養/介護相手の有無です。
趣味を楽しむ時間的余裕や、大きな金額の使用にかかわる意思決定過程に差が出ると思われるからです。
きわめてプライベートな内容であるため、いる/いない/回答拒否の選択肢とし、詳しい内容は求めませんでした。
ただし、後述しますが、実際の行動よりはるか前の段階に課題があることが見えたため、結果としてこの設問は分析項目としては意義の薄いものになってしまったと考えます。

回答内容/パーセント/件数

  • いる:13.4% 237件
  • いない:84.1% 1489件
  • 答えたくない:2.5% 45件

(回答総数 1771件)

〇〇女子/〇〇男子等性別呼称についてどう思うか

この設問は、筆者が回答を知りたくて設けたものではありません。
実感として、このような呼称を嫌う方が周囲にとても多く、それでいて、この層を呼ぼうとしてその呼称を用いる方々があまりに多く見受けられるため、具体的に数を出したいと思い設けた質問です。

回答内容/パーセント/件数

  • 特になんとも思わない:27.3% 482件
  • 不快に思うが行動に変化は発生しない:52.9% 935件
  • 不快に思い、該当の相手・施設等を避ける:18.3% 323件
  • 好意的に思うが行動に変化は発生しない:1.1% 20件
  • 好意的に思い、該当の相手・施設等への接触が増える:0.3% 6件

(回答総数 1766件)

実に71.2%が「不快」回答を選択しました。

これはジェンダー論のアンケートではなく、なぜ不快であるのかを明確にすることは主目的ではありません。
ただし、なぜ不快な語であるのか説明しないとわからない方々も一定数いるようですので、この結果を仮公開した際の反応から代表的なものを挙げていきます。

  • 普通その性別の人間は好きにならないはずのものを好む変わり者というレッテルであり、異物として扱われ居心地が悪い
  • 興味を持った層が多い結果がブームであるのに、ブーム「だから」近づいたミーハー層、深い興味を持たない層(ニワカ)という扱いをされる
  • 当該の性別を排斥したい層が、排斥のためにその語を用いる(結果、当該の語が蔑称となる)
  • 性の呼称でくくられることで、性的対象としての消費を目的とした層が寄ってくる(加害を受けやすくなる)

はじめの、異物扱い云々のあたりは、比較的男性にもわかってもらいやすい印象があります。ミラーリングに相当する呼称が比較的多いからでしょうか。
「スイーツ男子」「手芸男子」等。「イクメンではなく父親と呼んで欲しい」という主張も近い内容かと思います。

次のニワカ扱い・蔑称扱いは、実例をアンケート後半の自由回答から抜き出して提示します。

  • 刀剣女子と括られて報道される可能性(そこまでディープなファンでもないが、所詮女の遊びと軽んじられてまともに相手されないのも困るため)
  • 長年日本刀を好きであるという男性の方から「刀剣女子迷惑なんだよね」と面と向かって言われた。
  • ブームに従って「刀剣女子は鑑賞に邪魔・迷惑」という意見を見かける・実際に撮影可の展示で写真を撮っていたら見ず知らずの年配の男性に怒鳴られたこともあるので、たとえ主催は歓迎してくれていても刀剣関係全体ではそうでもないかな、と感じることはあります。コラボならできるだけ観たり買ったりしていますが。
  • 真面目に刀を勉強しているのに、「刀剣女子」と一括りにされて、痛い目線で見られることがあるのがつらい。
  • 「刀剣女子」と呼ばれると見下されている気持ちがする
  • 私自身は自分の刀を研ぎに出したりもしているので、”刀剣女子”は騒ぐだけでなんにも貢献してくれないと言われると少々悲しくもなります。

実際には、歓迎してくださる方のほうがはるかに多いのですが、排斥に走る方々が一定数いるのもまた事実です。
過去「歴女」等でも同様の事例は多数聞いています。

性的対象としての消費云々は、まずはこちらをご覧ください。以前雑誌で炎上した「美術館でのナンパ指南」記事について書かれたものです。
美術館ナンパに走る老害と、彼らがセクハラしかできない理由 - エキサイトニュース
おそらく大多数の真っ当な男性は「そんな馬鹿な真似をする人がいるわけがない」と思うのでしょう。けれど、この類いの不審者情報は、美術館へ通う女性の間でときおり耳にするものです。
痴漢問題と同様、一人の加害者がいれば、複数の被害者が発生してしまうものなのです。

主要な不快要因としては上記のとおりですが、美術館・博物館や大きな商業施設がこのような語を用いた場合には、「当事者にとっての蔑称を気にせず用いている=十分なマーケティングをせず、ブームに便乗して食い物にしようとしている」というような悪印象も付随しがちです。

なお、結果を速報的にTwitterで公開した際、ゲーム設定内の語との座りの悪さからではなどという意見をいただいたのですが、所詮「創作物の設定の話」と「現実世界において自分たちがどのように扱われるかの話」をごちゃまぜにするのはやめていただきたく思います。
たとえ過激な成人向け作品を好んでいたとしても、現実でそのように扱われたいわけではありません。(男性向け傾向は知らないけども)
「刀剣女子ではなく審神者と呼んでほしい」というのは代案の提示でしかなく、望み通りの呼称で呼ばれないから不快に思っている類いのものではありません。
さらにフラットに「ただ刀好きという以上の呼称は不要である」という主張も同様です。

また「なんとも思わない」層には、感覚として理解できない層と、「相手に侮辱の意図がないなら仕方ない」と考えている層といるようです。
語の持つイメージとしてアンケートを設定するならば、また別の結果が出るかもしれません。
(感覚として理解できない層は、おそらく各種被害にあったことのない層だと思いますので、できたらそのままでいてほしいものです。不快な思いはしないにこしたことはありません)

なお、このアンケートの男女比上、この回答結果は実質的に女性の回答傾向を示しています。
男性については、不快とする回答が50%に少し満たない程度、なんとも思わないも同等程度の割合であり、回答傾向は明確に異なります。
(男性の回答件数は50件と少ないですが、女性について連続する50件分を切り出した場合、不快回答は7~8割を推移するため、傾向を見るなら十分な差があります)

ただし、男性の回答傾向においても、このような呼称に好意を持つ層は多くないため、やはりマーケティングにおいて積極的に使う意味はないと考えます。

好きな刀剣系作品

設問が不十分で自由回答が多いため、別途集計します。
意図としては、(設定上はともかく)擬人化系作品のうちファン層と自認しているもののタイトルを複数選択式(想定外があるかもしれないため自由記述も可)、重要アイテムとして刀が登場する作品のうちファン層と自認しているもののタイトルを自由記述式、というものでした。
アンケートの主な回答層が想定とあっているか確認するためです。

まず、選択式については次のようになりました。

  • 刀剣乱舞:1720票
  • しんけん!!/しんけん魁!!:73票
  • 天華百剣:37票

※筆者はしんけん及び天華百剣のプレイヤーコミュニティに属していません。この結果はファン数の比率をそのまま示すものではありません。

自由記述では、次のような作品が目につきました。こちらは別途集計します。

推しキャラクターの元刀剣・所持刀剣と鑑賞上の好み自由記述

時折、昨今のブームについて「キャラクターの元になった刀剣にしか興味がないから」などとぼやく方々を見かけるが、体感として、実物の鑑賞をある程度するようになった層は、鑑賞上の推しをキャラクターの推しとまったく別のところに見つけることが多いように思います。
それを確認してみたくなり、作成した設問ですが、想定より回答数が多いため、別途集計します。

刀剣に関する興味(推し/実装済/刀剣全般)

とはいっても、実物に関する興味の度合いは、推し>実装済の推し以外>全般 というように強弱があることが予想されるため、それを確認しようとしたものです。
また、刀剣への興味は、かならずしも刀身そのものへの興味とイコールではありません。どの部分に興味を持っているのかを知るために設定しました
集計については改めて行います。
感覚としては、「実物に興味がない層」は想定通り少ない数値となりましたが、「キャラクターにつながる内容以外に興味がない層」が想定したより少なかったです。
今回の回答は、「刀剣乱舞を好み、実際の刀剣に対してかなり強い興味を持つ女性」が主軸といえます。

日本刀に興味を持った時期

回答内容/パーセント/件数

  • 昨今の刀剣ブームから:46.3% 814件
  • ブーム以前から興味を持ち、調べたり行動したりしていた:12.6% 222件
  • ブーム以前から興味を持っていたが、調べたり行動したりしたのはブーム開始後:37.5% 658件
  • 日本刀そのものに興味はない:3.6% 63件

(回答総数 1757件)

「以前から興味を持っていたが、行動を起こしたのはブーム後」の層が4割近くを占めました。
今は行動を起こしたということは、作品そのものにしか興味を持たない層ではないということです。
以前にはあった行動へのハードルが昨今のブームにより軽減されたのではないかと考えます。資料へのアクセス難易度や、刀というものに対する偏見は間違いなく昔と比べれば軽減していると思います
この部分は、昨今のブームの功績と呼んでよいと考えます。

ただ、この結果からは、同時に従来の愛刀家層・業界層が、刀に興味を持った層にアピールしきれていなかったというのも見えてきます。
深度はともかく、従来興味を持って調べていた方の倍以上の方々が「興味はあるけれど」というところでとどまり、それ以上に進んでは行かなかったわけです。
そこは引き込みにいかなかったら惜しい層ですよ。

日本刀に興味を持って購入・利用したもの

回答内容/件数

  • 模造刀: 339件
  • 日本刀の形状をモチーフにしたグッズ: 1056件
  • 鍛冶職人製作の実用刃物: 330件
  • 関連書籍(雑誌の特集やムック含む): 1397件
  • 日本刀及び拵に関連する材料・技法によるグッズ: 429件
  • おっきいこんのすけの刀剣散歩(配信の閲覧含む): 804件
  • こん散歩以外の日本刀映像番組: 788件
  • 伝統芸能の舞台鑑賞(直接の鑑賞・映像配信の閲覧含む):577 件

(複数選択可 回答数1,635 件)

実際のところ、どういうものにお金を使っているのかなということで儲けた設問です。
よくよく考えたら、刀剣関連のクラウドファウンディング等も候補に入れても良かったかもしれないと思いました。
また、こちらの設問意図としては「実用刃物」は包丁を含むものとして考えていましたが、RT先の反応などで「包丁が選択肢にないのはなぜだ」というものがちらほらあったため、当該の項目についてはアンケートを取り直すともう少し多くなる可能性があります。

興味がある美術館・博物館ジャンルと訪問頻度等

「刀以外に興味が無い」なんて揶揄されることがありますが、そんなわけはないので、実際どのあたりが気になるか聞いてみましたというアンケートです。
他のジャンルで経てきて興味を持っている方もいるでしょうし、刀の周辺として入った方もいるでしょう。物語を書くための材料としての興味がそこにある方も少なくはありません。
もちろん、ゲーム外に興味のない層や、直接つながる部分だけに興味を持つ層が今回回答にあまり入っていないからという面もありますが、方向性としての参考にはなるかと。

  • 日本刀: 1588件
  • 刀装具・拵 : 1270件
  • 武具(甲冑・弓矢・古式銃・馬具等): 786件
  • 仏像・仏教芸術: 742件
  • 伝統芸能の装束・道具(能・歌舞伎・文楽等): 864件
  • 茶道具: 599件
  • 金工芸: 660件
  • 漆工芸: 709件
  • 木工芸: 461件
  • 日本画・浮世絵: 910件
  • 歴史: 1236件
  • 文学: 907件
  • 民俗: 1017件
  • 科学: 568件
  • キャラクター以外興味はない: 38件

(複数選択可 回答数1,760 件)

美術館・博物館を訪れる頻度・ジャンルの変化についても問いましたが、こちらは単一回答とすべきところを誤って複数回答設定してしまったため、参考値とさせてください。

  • 頻度・ジャンル共に変化はない: 343件
  • 以前より訪問する回数が増えた: 858件
  • 以前より訪問するジャンルが増えた: 268件
  • 頻度・ジャンルともに増えた: 489件

(複数選択可 回答数1,754 件)

美術館・博物館関連について、記述式の項目も設けましたが、ざっと見た範囲では傾向が絞れなかったため、別途分類・集計します。

刀剣鑑賞会への参加

後続につなげる前段階の設問として設定しました。そもそも「刀を手に取って見る場がある」ことがどの程度知られているのかを確認してみたいと考えました。
参加「なし」とした方でも、自由記述で「お手入れ体験に参加したことがある」と挙げてくださった方もいるため、設問設定によって多少の変動があるかもしれません。

  • ない/そのような場があることを知らなかった: 10.1% 179件
  • ない/場があることは知っていたが興味が無かった: 11.3% 200件
  • ない/場があることを知っていたが都合が合わず参加したことはない: 50.5% 893件
  • 参加したことがある: 28.1% 498件

(回答数1,770件)

自由記述については別途集計しますが、困ったこと、不安になったこととして目立つものに、次のようなものがありました

  • 開催タイミングが合わない、どのように場を探してよいかわからない
  • 求められるマナーがわからず不安
  • 現状の知識に不安がある
  • 落とさないか心配
  • 差別・セクハラが心配(伝聞)
  • 差別・セクハラを受けた(体験)

なお、フォローが充実した初心者向けの会に参加したため不安なく体験できたという声も複数ありました

この項については、ハラスメント関連の回答も複数あるものの、数としてはそこまで多くありません。
筆者の感覚としても、単発の鑑賞会や体験の会でそこまで深刻なハラスメント事案は多くないと思います。

刀剣愛好団体への参加

従来の刀剣愛好団体への参加についての設問です。一部、美術館の友の会と混同した回答がありましたので、設問方法によって多少変動するかもしれません。

  • 存在を知らなかった: 25.1% 444件
  • これまで加入しておらず、予定もない: 57.3% 1013件
  • これまで加入していないが、検討中である: 10.4% 184件
  • 加入を検討したが取りやめた、あるいは加入していたが退会し、現在は加入していない: 4.2% 75件
  • 現在加入中である: 2.9% 51件

(回答数1,767件)

設問目的は、「参加をやめた/退会した」層の理由を分析することです。
別途集計しますが、おおむね次のようなものがありました。

  • 会への情報アクセス方法がわからない
  • 交通アクセスが不便
  • 生活スタイルが合わない
  • 入札鑑定スタイルが合わない
  • 会の不透明性・閉鎖性
  • 所属者からのパワーハラスメント・特定の刀剣作品を貶める発言(体験/直接見聞)
  • 所属者からのセクシャルハラスメント・マンスプレイニング(体験/直接見聞)
  • ハラスメントに関する伝聞

愛好団体は、個人のコレクションを見せていただく会という性質上、多少の閉鎖性はやむを得ないと思います。
(オタク層だって、べたべた指紋をつけそうな人には大事な写真集は見せないでしょう。それと同等です)
交通アクセスも、いたしかたない原因ですが、それ以外は改善の可能性がある項目かと思います。

ハラスメントについて、アンケートと別の場ではあるが、公然と行われた痴漢行為の加害者を運営側が擁護するなどのひどい例も耳にしています。
もし、従来の団体が女性層の増加を望むのであれば、最低限、運営層の間で「ハラスメントは悪いことである」という認識を共有していただきたいところです。
もちろん、認識を共有したところでおかしな人が出現する可能性というのは一定量存在します。しかし、悪いことだという認識があるだけでも、一定量の抑止効果は得られると考えます。
女性の側も、すでに女性会員が所属しているところを探して様子を聞いてから加入するか、ハラスメント禁止を明確にしている会に参加することが望ましいといえます。被害側がコストを蒙るのは大変おかしな話ですが、それが現状といえます。

日本刀の購入について
  • 考えたこともない: 51.1% 877件
  • 所持(購入、注文、譲受)を検討中である: 20.2% 346件
  • 所持を検討したことがあるがとりやめた/所持していたが手放した: 14.7% 253件
  • 現に所持している: 4.8% 83件

※誤って自由記述を用意してしまったため、上記以外にも細かな回答があります。別途分類します
(回答数1,716件)

設問目的は、「購入をやめた/手放した」層の理由を分析することです。
別途集計しますが、次のようなものがあがっています。

  • 維持・管理に関する不安
  • 自身がメンテナンスできなくなった場合の不安
  • 金銭面
  • 家族の反対
  • 動物・子供・介護対象者等、管理上の課題となる存在がいる
  • 店選びが不安
  • 購入を考え店に行ったが門前払いされた

集計前の印象ですが、維持・管理に対する不安が圧倒的に多いです。
ただしその中には、維持管理の負担を過剰に大きなものとしてとらえているように見えるものもあります。
刀よりも厳密な保管条件を持つ「銃」と同程度を想定していると思われる回答も複数ありました。

あちこちで発信されていることですが、日本刀を所持するのに免許は不要です。
通常流通している日本刀を買う場合、警察との関わりが増えることはありません。
(警察と関わる必要があるのは、未登録の日本刀を発見した場合くらいです)
通常の維持管理に必要な費用は、塗り直すための油と高級ティッシュ、除湿剤程度で、多めに見てもせいぜい数千円レベルかと。頻度も数ヶ月~1年に一回程度のことです。
研磨や白鞘の作成等を行うなら相応の額が必要になりますが、それらは高頻度で行う必要はありません。状態のいいものを購入したなら、一人のオーナーの元にある間一度も行わない場合もあり得ます。

その次に多い印象であるのが、自身の死後や、生きていてもメンテナンスが難しくなった場合、飽きた場合の不安です。
アンケートの回答者は、ごく長命種のペットのように、次の世話係を自身で確保しなければ、と考えている方が多いようです。
もちろん、受け継いでくれる相手が身近にいるからそちらに譲るというのは素敵な選択肢ですが、そもそも店に流通している刀は、「誰かが次の持ち主に受け継いでもらうために手放した」ものが大半です。
(従来の愛刀家層は、一つの作品をずっと持ち続けているとは限らず、十分楽しんだ後は店に買い取ってもらい、次の作品を購入するというような行動をとっています。古書も文化財も、流通することで次の世代に継がれていくものです)
ペットと違い、手放す場合の経路が十分存在し(身内との不和によるものはともかく)本来はそこまで問題にならないはずの内容ですので、この回答の多さには筆者は大変おどろきました。
この結果を仮公開した際の反応でも、実際に買った方々は、そういうものだとわかっていたから気にしていなかったという方が多かったように思います。

なお繰り返しますが、このアンケートの回答は、「刀剣乱舞プレイヤーのうち刀剣の実物に対して興味関心が強い層」に偏ったものです。
つまり「刀剣鑑賞を相応に好んでいると思われる層が買わない理由」です。
中には、そもそも欲しいのはペット的な存在であるという方もいるでしょうが、例外的なものと考えます。実際の刀に重きを置かない層であればそちらのほうが多いでしょうが、今回の分析目的としては検討の軸ではありません。
(ペット的な物をほしい層に向けてなら、模造刀のパターンオーダー(刃の雰囲気/鐔/目釘/柄巻の色などを用意されたカタログから選択)などをやったらそれなりに受けそうだと思いますが、継続的な顧客層にはなりにくい層ですし、今はそれ以前の状態だと考えます)

アンケート実施前、筆者は、門前払いされた例がもっと多くなると考えていました。
刀をほしいと思って店や刀剣市に行ったものの、店の側が女性を客扱いせず、品を見せてもらえないという話はそれなりによく聞きます。
だからこそ、筆者の周囲で刀を購入した層は、既に他の仲間が購入した実績のある店に行く傾向にあり、そのために女性が購買行動を起こす店が限られ、業界としてのインパクトには結びついていないのではと考えました。
けれど、アンケート結果として出てきた「買わない理由」は、店に行くよりはるかに前、刀を持つことに対する具体的な検討をするより前の段階の課題と言えるでしょう。
そして、男性の記述回答が少ないため単純比較はできませんが、現れたハードルは「女性だから知らない」「ゲームから入ったから知らない」類いのものではありません。
将来的に、今回のブーム以外から興味を持った層が出てきたとしても遭遇するハードルであると考えます。
結論としては、業界の方々は、刀のあるライフスタイルがどんなものかというPRが必要なのではないかと思います。
刀を持たない理由として「単身である」「家族がいる」それだけのワードがぽんと両方上がってくるというのは少々おかしな状況だと思いますので。
(もちろん、このあたりを解消するようなPRをきちんとされて、お忙しくされている職人さんがいることも存じていますが、例外的であると見ています)

他にもイメージの改善というのも必要な項目だとは思います。
当事者層が同質かつ価格帯が同等ということで、ロードバイクを比較対象としたところ、Twitter上で、自転車と武器では違うという反応がありました。
けれど、ロードバイクは「一般環境下で用いる」走る凶器です。(乗る人間はその心構えをたたき込まれます。生身で原付並の速度を出せる乗り物であり、車両としての事故リスクはどうしてもつきまといます)
それよりも「限定環境で鑑賞する」武器(武術用だとしても「限定環境下で安全に留意して用いる」武器)のほうが危険というのは、リスク管理の上で大変おかしな話です。
その部分にハードルがあるというならば、それはイメージの問題といえます。

おわりに(仮)

筆者は、「刀を持つ」のも「愛好団体に入る」のも、刀を好きになった先に数ある道の一つでしかないと考えます。
魅力を感じないのであれば、無理に進む必要はありません。
けれど現状、それらの道への入り口は、ひどくわかりづらく隠されているように思います。
道が険しいから人が行かないのではなく、そもそも道が見えず、険しいのかどうかすら見えていない状態であると思うのです。
人が来ないと嘆く方々は、せめてその前に道が見えるように整えるのが先だと思いますし、そのための手伝いくらいは、刀の世界で楽しませてもらった一人として行いたいと思っています。