とある歴クラ見習い審神者の備忘録

調べたこと・面白かったものと、自分が調べるときにあったら便利だったなと思うまとめを置いておく場所

徳美内覧会「漆/怪々奇々」

徳美の内覧会にいってきました。
ちなみに当方は一般人なので、かろやかさんが呟いていたプレス用ではなく、その後に行われた賛助会向けのほうでございます。
でもプレス向け資料はしっかりチェックしていきましたとも。
徳美の普段の展示は図録の類いがないので、概要がある資料はとてもありがたいのです。わかりやすいですし。
https://www.tokugawa-art-museum.jp/about/press/

これまで内覧会は一度しか行ったことがなかったんですが、だいぶ様子が違いました。
場所は講堂で、入るときには検温あり、消毒のボトルが二種類。
普段、どの会員が来たのかは記録していないのですが、今回は参加者と同伴者の名前を記録。
そして座席も、距離をあけた市松状の配置で机なし。
演壇には透明なかこいがつくられていました。
講座再開のためのお試しの意味もあったようなので、秋の講座なんかはこの状態になるんでしょうね。
(いつも講座の類いは申し込みに余裕あるのですが、すでに満席…出遅れました。)


まずは徳美副館長と蓬左文庫文庫長というトップお二方のご挨拶から。
コロナ禍で「家康から義直へ」と「田渕俊夫」展の開催が中止されたわけですが、中止された展示については来年度ふたたび計画しているとのこと。楽しみです。

実は開催できた展覧会にも、少なからず影響があったそうです。
先に行われた祈りのこころでも、今回の漆/怪々奇々でも、他から展示品を借りてくる計画があったものの、借用のための移動が困難ということで、館蔵品ばかりの展示に切り替えたのだとか。
(漆はわずかに個人蔵もあります)
蓬左に新たに赴任された文庫長の、企画展や特別展を開けるのは、以前は当たり前だと思っていたけれどそうではなかった、という言葉が重たかったですね。

今回、漆は「何を見せるか」に焦点をおいた従来型の展示、怪々奇々は近年の美術展にらしい「どう見せるか、何をみてほしいのか」に焦点をあてた展示であり、どちらも必要なのだとおっしゃっていました。
対称的な展示の様子もまた、おもしろポイントでございます。

そしてそれぞれの展覧会の担当者から、展示解説を聞いた後、講堂の前方にいた面子は怪々奇々から、後方にいた面子は漆から見学スタートです。


怪々奇々、装飾がめちゃかわいいんですよ!
展示室内は撮影できないので蓬左ホールのやつだけぺたり。
帰り際に、更にエントランスにパネルが増えておりました。
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夏に大人気、幽霊とか妖怪とか、そんな感じの紙資料を中心とした展示です。
今回、普段の展示よりも、その記述がどんな内容なのか、さらにはどんなバックグラウンドがあるのかといった解説が多めでした。

絵巻も、解説が場面ごとしっかりついていて面白いです。
百鬼夜行絵巻の模本と武太夫物語絵巻などはだいぶ長く広げてあって、物語として追いかけやすくなってました。
(巻替えあるのでちょこちょこ行きたいやつです)
後者、勇敢さを競うために百物語をしたら、連日怪異がやってくる、という物語で、おもしろい、ぜんぶ読みたいと思っていたら、帰り際に講堂横パネルに物語のパネルが!やった!

事前にかろやかさんが呟いていた、蛇身の女が鐘を締め付ける絵、道成寺かと思っていたら、実は似ているけど違う物語だそうで。
…登場する男、安珍よりグズかもしれません。
https://twitter.com/tokubi_nagoya/status/1278972569333280768?s=19

話題になったアマビエの元じゃないかといわれるアマビコもでてます。
青窓紀聞のものは、アマビコの描かれた諸本の中でも特にに古い(一番っていってたような?)のだとか。
こいつ、顔のパーツがへのへのもへじ的なやつなんですよ。
ケースにもパネル解説があったんですが、口が「天」のくずし字、鼻が「ひ」の文字、目が「こ」の文字だそうで…w
https://twitter.com/tokubi_nagoya/status/1283978528367669250?s=19

作品名をメモしそこねたのですが、最後の部屋の単独ケースに入った本、パッと見単色刷りなんですが、実は多色刷り印刷なのだと教えてもらいました。
そうね。版画だものグレースケールなんてないわね…墨版+薄墨版すごい…

ぶっちゃけ、内覧会の時間だと、個別の解説をきっちり読む時間はないのですが、今回のは早く再訪してちゃんと読みたいところです。
私は気づかなかったのですけど、さにわにお馴染み、小夜左文字の逸話の物語らしきものもあったそう。

妖怪を描いた絵の中に、がごぜという、布をかぶったやつがいて、しょーもないことを考えておりました。
(あの絵がメジャーな時代にまんばちゃんが飛んで目撃されたら、がごぜに見間違われるんじゃないかなーなどww)




そして漆。
徳川美術館の所蔵する漆作品は、希少さ、量、保存状態がよく、国内トップクラス、世界でも通用するコレクションなのだそうです。

まずはじめは、漆とはどんなもので、どんな使い方をするものなのか、ということで、文献に書かれた漆の話と、日用的な使い方を含めた漆の品からスタートです。
防水につかった笠、堅牢性を高めるために使った鎧(の一部)、刀(当麻)の朱銘や、さび止めに漆を刀身に塗った小刀、金糸を使った織り物、金継ぎをした器などなど。

谷崎潤一郎の作品の一節とともに漆の椀各種を並べたところも壮観でした。
こう…高級品だけど日用品のうちだったと思われるシンプルなのもあるわけですよ。
比較的時代の新しい品というのもあるけど、どれもぴかぴかで綺麗…
ここにあった螺鈿の菓子椀好きです。

ぐりという技法を使った作品と白い漆を彫って模様にしたものは珍しい(特に後者はここにある一点のみ!)とのことなんですが、短時間でぱっぱっと見ただけだと魅力よくわからなかったのでまたじっくり見てみます。
朱漆の盆が並んだコーナーは、色あいの変化を見てほしいという解説がありました。

一部屋目の後半が螺鈿コーナーだったんですが、これはたとえ写真を見たことがあっても実物を見てほしいやつでした。
黒字に繊細な線の螺鈿って、写真だとただの白いラインになっちゃって地味なんですよ。
でも実物を見ると、めっちゃラメラメな感じで華やかなんですよ。
螺鈿の最初にでている鳳凰に竜の個人蔵作品は、細工の細かさを見てほしいと案内がありましたが、あれは見ちゃう…恐ろしい…
3つでセットの食籠も、繊細なきらきら加減が素敵でした。(そろってるのは珍しいとのこと)

最後の部屋にあった梅花皮写(かいらぎうつし)の鞍はすごかったです。
説明ついてなかったら、「かいらぎって鞍にも使うのかー」ってスルーしちゃうやつ。
一つ一つのぽつぽつを象牙で作ってはりつけて漆を塗ってとぎだした、気の遠くなりそうなお品…

※この写真は岐阜県博でとったやつですが、梅花皮ってこういうやつです。
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この部屋の印籠についてた鳥さんが、つやっつやしていて可愛かったです。

ということで、内覧会レポとしては遅くなっちゃいましたが、そんな感じでした。
今回のはどっちかのテーマに興味があるひとにはとてもおすすめ。
昨今、コロナ情勢の問題があるのでどんどん来てとはいえませんが、問題なさそうな方はぜひとも。