「刀とレジンのアート」新し-ARATASHI-
こちらは美術館などの展示ではなく、デパート(名古屋栄三越)のギャラリーでの展示でございます。
Twitterで情報が回ってきたことで興味を持っていってきました。
2023/3/15~3/21という短期間の展示です。
【刀とレジンのアート】新し-ARATASHI-
— 刀鍛冶 日本玄承社 (@genshousya) 2023年2月18日
伝統技術と現代技術を融合させ、日本刀の美を体感し
新しいスタイルを築きます。
会場 : 名古屋栄三越 8階 ジャパネスクギャラリー
期間 : 3月15日(水)~3月21日(火)
午前10時-午後8時 [最終日午後5時終了] pic.twitter.com/nhzVsF1bKE
刀をレジンに封入することについては各人いろんな意見があるでしょうが、今回のものは
・刀鍛治さんご本人がやりたいと願っていた挑戦である
・保存ではなく、普及を目的としたものである
という二点をお含み置きいただきたく。
刀剣を樹脂に封入、という行為は、確か渡邉妙子先生の本で、批判的に書かれていたのを見た記憶があるんですよ。
海外事例で、保存を目的としたものだったかと思います。
ちょっと今すぐ本を出して確認できないのであれですが、多分このあたり。
で、そうやって物議をかもすものって、実際に見て見たくなるじゃないですか。
そんな好奇心で向かったところ、そもそも意図するところが違うよ、というやつだったわけです。
実際にレジンで固められていた刀剣作品は太刀が一振りと、小刀が一振りです。
(他、おそらくレジンの業者さんのほうの作品サンプルとして、書や着物地、扇などを封入したものが飾られていました)
もちろん、まだ課題もあるようです。
(この小刀も、切っ先付近にはいくつか気泡があります)
ただ、「レジンに刀を封入する」と聞いてまず思い浮かぶあたりについては、考慮の上であるようです。
「黄変は?」という疑問には、変色後にレジンの表面を再加工することで改善可能、という回答がありました。(レジンそのものも比較的変色しづらい高グレードのものであるようです)
一旦封入した刀も、取り出せるそう。レジンを取り外すのに必要な高温は、刀にとっては影響がでない範囲の温度であるとかなんとか。
耐久年数も、さすがに百年単位は無理でも、何十年単位は想定しているようです。
鑑賞にも刀鍛治さんご本人たちの目で見て支障はないとのことでした。
そして、最初に書いたとおり、この作品の目的は「普及」
刀好きの人に訴求するためのものではなく、たとえば保安上の理由から今は刀を展示できない場所に展示する(ケースが壊されるIFを想定して飾れない場所の話よく聞きますね)とか、そのままの刀では怖いと思う人にも見て貰う・飾って貰う、というのが目的だそうです。
そうして裾野を増やした先に、通常の刀に興味を持ってくれたらいいな、という感じのようで。
つまり、刀をレジンに入れたことをアートとしているわけではなく、刀を一般アートとして扱う手段としてレジン封入しているわけですね。
この状態に対して好きか嫌いか、というのは一旦おいておいて、現代刀の需要喚起と、今より身近に存在させることで興味感心層を増やす、という目的に対するアプローチとしてはおもしろいなと思いました。
ちなみに、刀をレジンに封入するという例だけなら他にもあるようなんですが、そちらは「アートの構成要素として刀を用いる」もののようです。
コンセプトが違っておもしろいですね。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000038054.html
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名古屋市博物館のミニ屏風ワークショップ
名古屋市博物館で行われた、ミニ屏風作成のワークショップ行ってきました。
ものを作る系のワークショップって、子どもターゲットのものも多いのですが、このワークショップは、こども向けの入門編と、一般向けのこだわり編が用意されていたので、後者に参加してきました。
まずは屏風についての解説いろいろからスタート。
数え方、部分の呼び方から、古い時代の屏風の構造と後の時代の構造の話。
調べたら出てくるとはいえ、調べようと思わないとわからないあたりをまとめて解説してくれるの嬉しいです。
内容的にはこのあたりが近い感じかな。
屏風を鑑賞するための基礎知識(1) - 滋賀県立近代美術館 公式ブログ
あと古い時代の屏風の例として、正倉院のやつが紹介されておりました。
金具があってひもの類いで接続しているのだそうで。
その場ではよくわかんなかったんですが、帰ってから調べてみたらわかりやすい復元品がありますね。
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/472266
会場の後ろには、楼閣山水図屏風のレプリカがあって、「本来の鑑賞状況」に近づけた鑑賞をさせてもらいました。
e国宝 - 楼閣山水図屏風
本来は床に座る高さで見るのだという話を聞いたときには、はっとしました。
確かに、屏風の前に立った状態と、座った状態とだと目の行く高さが全然違ってくるんですよね。
屏風の前に立つと、目線と同じくらいなのは屏風の上1/3くらい。
展示室とかで多少の高さがある台に屏風が乗っかってた場合だと、屏風の真ん中くらい。
でも、座ったときに最初に目が行くのって下1/3くらいなわけで。
あと、蛍光灯を消して、屏風の手前に置いたあんどんの光で見るというのも体験させてもらいました。
(電気式とはいえ)あんどんの光はそんなに強くないので、置いたところ周辺だけぼわっと照らされた感じになって、更に金屏風なのでうっすらと反射するのは、なかなか雰囲気がありました。
そしてミニ屏風づくり。
屏風の土台部分は板を使って、そこに紙蝶番を加工して表の紙を貼って屏風にしていきます。
紙蝶番については、最初の解説にもあったし、作業手順資料にも仕組みが書いてありつつ、それを読んでも「なんのこっちゃ?」だったんです。
でも、作ってみるととてもよくわかるわけで。
名古屋市博物館のミニ屏風ワークショップいってきました。
— セツカ@更新情報 (@waterseed_upd) 2022年11月5日
めちゃくちゃ楽しかった…
この動画は、屏風の開閉機構の紙蝶番を板に細工したところ。説明文でよくわからなかったやつが、手元でつくってみるとよくわかるのがとても面白いの pic.twitter.com/gRiCrOb5mJ
こうやってどちら側にも開く状態のものをどちらかに開いた状態で紙を貼ると、可動範囲が狭くなって、実際の屏風みたいな状態になるようです。
そしてできあがったものがこちら。裏側も唐紙風のプリントを張ってあるので、後ろから見てもちゃんと屏風っぽいです。
折り目のあたりはちょっと粗いんですが、それっぽくできました。
おもち連れていけばよかったと後からちょっと思ったり。
今後同じワークショップがあるのかわかりませんが、もし開催されたならおすすめでございます。
とても楽しい体験でした。
徳美定期研究発表会「『建中寺墓地改葬日誌』について」行ってきました
徳川美術館の定期研究発表会を聞きに行ってきました。
今回のテーマは「『建中寺墓地改葬日誌』について」
既に発行済の金鯱叢書第48輯の内容と、そこに書き切れなかった内容について、の会でした。
論文は、徳美のサイトからPDFが閲覧できます。
金鯱叢書 | 出版・刊行物 | 調査・研究・教育 | 名古屋・徳川美術館
日本刀アンケート(続仮集計):所持に対するハードル
以前行ったアンケートの自由記述分析にようやくがっつり取り組み始めました。
ということで、以前公開した概要部分はこちら。
waterseed.hatenablog.com
2021徳川美術館とうらぶコラボとナイトミュージアム
まず、真面目な観光案内やら内覧会で見てきた記録はこちら。
(刀の見え方はその後多少変わっております。壁際とかのはだいぶ改善した気が。単独ケースのはかわんないけども)
徳美×とうらぶコラボのための徳美周辺案内 - とある歴クラ見習い審神者の備忘録
徳川美術館「名刀紀行」「あかがね/くろがね」内覧会速報 - とある歴クラ見習い審神者の備忘録
続きを読む鯰尾&後藤、最前列用の整理列あり。
— セツカ@更新情報 (@waterseed_upd) 2021年6月5日
刀かけの横パネルの高さから見上げて、ギリギリ天井が写らないくらいの角度で見ると比較的いい感じだった気がします。 pic.twitter.com/mMk7UpAD0o