とある歴クラ見習い審神者の備忘録

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「刀とレジンのアート」新し-ARATASHI-

こちらは美術館などの展示ではなく、デパート(名古屋栄三越)のギャラリーでの展示でございます。
Twitterで情報が回ってきたことで興味を持っていってきました。
2023/3/15~3/21という短期間の展示です。

刀をレジンに封入することについては各人いろんな意見があるでしょうが、今回のものは
・刀鍛治さんご本人がやりたいと願っていた挑戦である
・保存ではなく、普及を目的としたものである
という二点をお含み置きいただきたく。

刀剣を樹脂に封入、という行為は、確か渡邉妙子先生の本で、批判的に書かれていたのを見た記憶があるんですよ。
海外事例で、保存を目的としたものだったかと思います。
ちょっと今すぐ本を出して確認できないのであれですが、多分このあたり。

で、そうやって物議をかもすものって、実際に見て見たくなるじゃないですか。
そんな好奇心で向かったところ、そもそも意図するところが違うよ、というやつだったわけです。

実際にレジンで固められていた刀剣作品は太刀が一振りと、小刀が一振りです。
(他、おそらくレジンの業者さんのほうの作品サンプルとして、書や着物地、扇などを封入したものが飾られていました)

もちろん、まだ課題もあるようです。
(この小刀も、切っ先付近にはいくつか気泡があります)

ただ、「レジンに刀を封入する」と聞いてまず思い浮かぶあたりについては、考慮の上であるようです。
「黄変は?」という疑問には、変色後にレジンの表面を再加工することで改善可能、という回答がありました。(レジンそのものも比較的変色しづらい高グレードのものであるようです)
一旦封入した刀も、取り出せるそう。レジンを取り外すのに必要な高温は、刀にとっては影響がでない範囲の温度であるとかなんとか。
耐久年数も、さすがに百年単位は無理でも、何十年単位は想定しているようです。
鑑賞にも刀鍛治さんご本人たちの目で見て支障はないとのことでした。

そして、最初に書いたとおり、この作品の目的は「普及」
刀好きの人に訴求するためのものではなく、たとえば保安上の理由から今は刀を展示できない場所に展示する(ケースが壊されるIFを想定して飾れない場所の話よく聞きますね)とか、そのままの刀では怖いと思う人にも見て貰う・飾って貰う、というのが目的だそうです。
そうして裾野を増やした先に、通常の刀に興味を持ってくれたらいいな、という感じのようで。
つまり、刀をレジンに入れたことをアートとしているわけではなく、刀を一般アートとして扱う手段としてレジン封入しているわけですね。

この状態に対して好きか嫌いか、というのは一旦おいておいて、現代刀の需要喚起と、今より身近に存在させることで興味感心層を増やす、という目的に対するアプローチとしてはおもしろいなと思いました。

ちなみに、刀をレジンに封入するという例だけなら他にもあるようなんですが、そちらは「アートの構成要素として刀を用いる」もののようです。
コンセプトが違っておもしろいですね。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000038054.html

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