とある歴クラ見習い審神者の備忘録

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徳川美術館「徳川将軍ゆかりの名刀」二回目

さっそく二回目行ってきました。「とくびぐみそろいぶみ」
一回目の記事はこちら

えー…まず、混雑なめてました。ごめんなさい。
徳美は混雑しても、東京のほうの展示ほどすごいことにはならないとか思って、ツイッターでもそう呟いてたんですが、そんなことなかった。
21日の午前中、東京で行われるような人気展示並の混雑でした。
(地元民からすると恐ろしい混雑なのですが、都会のほうの混雑に慣れている方にはそこまでではないと思います。)

ただ、ものすごい混雑ぶりの中でも、スタッフの方々は可能な範囲でいろんなポイント改善してくださっているので、皆さまお行儀よくしましょうね。
また来てほしい客層だと思ってもらえれば、次につながりますから。
(一切文句をつけるなというわけではないですよ。もし万が一苦情を申し立てないといけないようなことがあれば、理性的に整然と行ってくださいませ。)
ご意見系は、売店奥に、アンケート箱ならぬ目安箱が設置してあります。
ここがよかったとか、こんな方向の展示が見たいとか、応援とか入れてきたらよいかと思います。

朝十一時の混雑

今回、美術館には11時前に到着しました。
チケット購入列は数名~十名以内程度、友の会やチケット購入済みの場合は待ちなく入れました。
ただし、ボランティアさん曰く、「もう少し早いか遅いと混雑がましになる」という、特に混雑する時間帯です。
長義待ち列が長いのは予想内だったんですが、第一展示室の、反対側の面の作品前も自主的に列形成がされていたのには驚きでしたよ。
第二展示室以降も、各展示品の前に人がいるような混雑ぶりでした。(普段なら、第二~蓬左文庫展示室はちらほらとしか人がいないんです)
そして本館展示室(今回の「徳川ゆかりの名刀」のメイン展示室)は、入り口に「前列で見るための列」が形成されている…!
初日より混雑してるじゃないですか!

ごはんと講演とおやつ

この日の主目的は自由聴講の講演だったので、この時点でちょっと予定を変更。
ロビーのところで宝善亭の方に「お食事いかがですか?」と言われたので、先にちょっとゴージャスなランチをいただくことにしました。
宝善亭は、徳美に隣接する懐石のお店で、ロビーから中庭を通っていくことができます。
予約でいっぱいになってしまうと当日飛込はできなくなるので、絶対行きたいという方や、特別メニューを注文したい場合は予約してください。
当日選べるメニューは、「旬小箱」という小鉢を中心にしたものだけです。(お寿司と茶碗蒸しor白飯でお値段違いの二種類から選びます)
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細かく融通を効かせられるタイプのお店ではないですが、2700円でこれならお値打ちかなと。
(そして2年前の企画のときに考えられた信長御膳という、信長の供応メニューを参考にしたメニューも、今も予約制でやっているようですので、興味のある方はぜひに)

この日の講演は徳川林政史研究所の深井雅海氏による「将軍と大名家との「刀剣贈答」」でした。
御著書『刀剣と格付け: 徳川将軍家名工たち』の紹介になりそうな範囲でレポしたいのですが、長くなりそうなのでちょっと改めて。

講演のあと(15時頃)喫茶室がちょっと空いてきていた(ウエイトリストが数名程度だった)ので、そちらを待つことに。
今回の鯰尾のお菓子いただきました。
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今回嬉しいのは、スプーンが添えられているところ。
二年前のとき、黒文字としてこのミニ鯰尾菓子きりが添えてあるだけだったのでちょっと困惑したのですよ。
黒文字だから口に運んでよいはず…でもこの光沢は口に運んだらいけなさそうなやつ…と…。
(出来がよいからこそ、近くで見ると本当の刃物みたいに見えてきまして…)

15時すぎの展示室

この日は、15時過ぎても第一展示室の列・本館展示室の列がかなり続いている状態でした。
音声ガイドは、一瞬だけ列なしで借りられる状態がうまれては列ができる、というような状態でした。

16時頃の展示室

この日は、16時くらいには長義の列も本館展示室の列も、展示室の中に納まる程度になっていました。
ただし、前日である土曜日は、同じような時間でも全く列が引かないどころか、閉館時間間際になっても列が解消しないような状態だったとか。
(土曜日は、特例で開館時間を延ばしてくださったそうです。
そしてこの時間から回り始めるのでは実は時間が足りないという…

個人的な攻略法

私は地元民で友の会に入っているので何度も来れるんですが、遠方から来る方でじっくり見たい方には、一日美術館に滞在するつもりで来ることをおすすめします。
朝一で来て、もし長義列か企画展の最前列待機列が小さければ並んで、すでに列が長くなっているのであれば第一展示室の逆側や、企画展示室の中に入ってとくびぐみより先の列形成が解除されてからの物を先に。
それが終わったら第二展示室~蓬左文庫展示室へ。
徳川美術館館内マップ

ご飯休憩をとりたい場合、美術館入ってすぐのカウンターで申し出れば、再入場可能にしてくれます。
(ハンコか何か押すらしいです。スタッフさんから説明聞いたことはあるけどやってもらってないので詳細不明)
喉が渇いた場合、売店の奥のところにウォーターサーバが設置されています。

なお、音声ガイドは、一度借りられると大体2~3時間くらいは戻ってきません。(全展示室の作品を全部見ると、待ち時間が少ない時でもそのくらいかかるので)
朝一で残がある状態か、午後の時間帯で待ち列が少ない状態であれば並んでおくとよいかと思います。
借りる場所は、初日はわかりづらい場所だったのですが、二週目には展示室入り口左側、売店のそばのわかりやすい場所に変わっていました。
台数は、正直言って少なかったです。ただそれでも、初日に全然足りなかったのを受けて、二週目には台数を増やしてくださっていました。
(機器の追加手配なかなか大変なようでどのくらいかかるか不明とも聞いていたので、まさか一週間で倍近く増やしてくださるとはと…)
なので今後も、音声ガイドの待ちは改善されるかもしれません。
音声ガイド、トラック一つ一つがかなり長くて、牛歩で列についていく分だと聞き終わらないうちに次の番号が出てくるかもしれません。
聞き損ねそうであれば、何番の展示品に音声何番が対応していたかメモをしておくとよいかも。
(展示室内ではペン・シャーペン不可ですので、鉛筆を使用してください)
なお、音声ガイドの4番は第二展示室(茶道具の部屋)の展示番号21番、音声5番は蓬左文庫の展示番号49番、音声6番は蓬左文庫の展示室79,80番だと思います。(手元のメモミスしてたらごめんなさい)

鯰尾の和菓子も、実はこの日一度品切れしたそうです。(そして追加で納品された模様)
気になっている方は遅い時間だからとあきらめずに、のぞいてみるのがよいかと思います。
普段と違って一人客は相席前提になるので、逆に気兼ねなく入れてよいかと思います。
ちなみに、早めの時間に行く方には、ここのサンドイッチも美味しいのでおすすめしておきます。
(こちらはさすがに今回、遅い時間だと売り切れてしまう模様)
なお、黒文字のミニ鯰尾は持ち帰りできませんので注意です。

もし午後一くらいまでに満足するくらい見れたなら、名古屋城が比較的はしごしやすくておすすめです。
天守は入れませんが、史料に基づいて復元した豪華な本丸御殿に入ることができます。
名古屋城公式ウェブサイト
(だぎゃー市長は天守の木造復元についていろいろ言ってますが、石垣の保全計画がずさんなので当分許可されないんじゃないかな…?ここの今の目玉は本丸御殿でございます。)

もしその時点でまだまだであれば、館内あちこちにある椅子か、一旦ハンコをもらって外に出て、入館可能な時間の間にもどってきて最後まで、という具合で。

売店、少なくともしおりは、後日ネットショップで売ってもらえるようです。
(ちなみに今ネットショップにある刀剣グッズは去年からのグッズです。)
徳川美術館オンラインショップ THE TOKUGAWA ART MUSEUM ONLINESHOP



waterseed.hatenablog.com

前回までの書き損ね感想書き足し

これまでのはこちら
waterseed.hatenablog.com
waterseed.hatenablog.com

えっと、まずは前回のブログ後に反芻したあたりから。
音声ガイド、まだ二回目借りれていないんですが、今回の音声ガイドは「世間でこう言われているけれど実は違うよ」というネタが多いなあと思いました。長義の呼び方の話ももちろんその一つで。

「家康が村正を嫌ったことを否定」「信康を自害させたのは信長ではなく家康」という話は原先生の論文「「刀 銘 村正」の伝来と妖刀村正伝説」からですよね。今回言い切る形だったようだけれど、他の論文とかで引用されたりしたんでしょうか。
(以前しかみ像の話は、まだ他の評価が出てないからばしっとした説明にできないというような話を聞いたときがあったので)
金鯱叢書 | 出版・刊行物 | 調査・研究・教育 | 名古屋・徳川美術館

尾張家七代宗春公の話も、今回聞いたのは名古屋に来てから持っていた印象とだいぶ変わるなぁと。
(知らない方向け:暴れん坊将軍で悪だくみする役にされちゃったお方です。節約令を出す吉宗公に対し、節約ばかりでは経済が回らないと独自路線をとりました。その度がすぎて目を付けられ、隠居させられた、というのが従来イメージ)
今回の解説だと、独自路線失敗→家中から見放される→最後通牒として隠居、という感じなので印象が…

その後の尾張家、十代から十三代まで御三卿や将軍の子が養子として入ってくるんですが、これは尾張で歓迎されない「押しつけ養子」で、中央の意向であるというのが従来像でした。
でも今回のガイドでは、あくまで尾張が望んだものという視点。
たぶんこちらはここ最近の藤田英昭先生の論文からかな。
徳川林政史研究所研究紀要

ちゃんと色々見ての感想

第一展示室に南泉一文字の大小拵があります。南泉が大です。小の中には短刀が入ります。ちっちゃいです。
この拵、尾張十六代の方が明治二年に作らせた、とキャプションにあるんですけど、その方明治十八年に十八歳で亡くなられた方でして、明治二年だと十二歳。数えなので実年齢にすると十歳か十一歳…そりゃあちっちゃいの選ぶよなぁと…。

あと、今回のレア品!長義に装着されているはばき!
なんではばきがレア品かというと、尾張徳川家伝来の刀は、普段普通の金属はばきを使わないので、はばきをセットにして展示されることがレアなのです。
じゃあどうしているのかというと、今回企画展示室の村正のところで該当部分が見えるように出ているのですが、白鞘の柄と一体になった木はばきを使っていると…
そちらの白鞘もしっかり見ておいてください。頭おかしい(誉め言葉)レベルの細工ですので…
(見た目的には地味なんですよ。でも木を彫ってそんな精度のもんが作れて、しかも強度的にも問題ないだなんて…)

常設展は言いたいこと全部言った気するので、蓬左文庫の話。
ここは、実は名古屋市の施設です。
名古屋市蓬左文庫|トップページ
今の展示テーマは『雅を伝える―宮廷と文化』です。
宮廷儀礼なんかの絵図とかが色々。こういうハウツーもの絵図の類、好きな人は好きなんじゃないかな…?
13番の高御座を描いた絵とか、ものすごく細かいので単眼鏡持っている人は覗いてみてください。単色かと思うと模様だから…。
京のかたなのときに出ていた菊消えかけの菊御作も今回展示されています。

で、今回のメイン。企画展示室の「徳川将軍ゆかりの名刀」
今回面白いことの一つ、折紙とかちゃんとした拵とか価値が間違いなくあるもののほかに「拵の残骸」みたいなものが時々展示してあります。
史料的価値は間違いなくあるけど、よくそれを残しておいたなあというようなやつ。
4番の鞘は、比較的きれいではあるけど太刀つるすための金具とか外した後っぽいですよね。若干ぼろっとしています。
(後藤藤四郎のところの柄の残骸(鮫皮のついた棒と目貫)は、後藤藤四郎の拵を再利用した後のもの、みたいな内容の説明が内覧会時にあったらしいですね)

もちろん豪華なほうのわけわからん物もあります。5番の正宗の刀袋、「正宗」って織り出してあるやつで…(以前別の展示で初めてみたときは絶句しました)

14番の光忠・守家合作刀、図録で見ていたはずなのに、今回初めて意識しました。でもって、今回初めて、以前教えてもらったことと結びつきました。
そういや「蛙子丁子が出て来たら光忠か畠田守家」って教えてもらってたじゃん、技術交流示すものあったのね、と。
(普段どれだけいろんな情報見落としてるかって話ですね)

壁面スペースに尾張家の系図があったんですが…情報量が多すぎてただの飾りになってしまっている…
でも確かに正確に書けば書くほど混乱が深まる図だから…

南泉一文字の梨子地刻の拵に付属する小刀、これも図録で見たときには意識していなかったんですが、実物をしっかり見ると他の小刀とだいぶ形が違いますね。使ってすり減った感じ。
小刀は用途的にははさみとかカッターみたいな身近な刃物なので、使うこと自体はおかしくないんですが…あれはついてる小刀があれだけ減るくらい、あの拵を多用していたと思ってよいのかしら…?それともつかいさしをセットしただけ…?
南泉のこの拵、よく見ると金具が小花模様でとても可愛いです。

物吉の白鞘が、他の白鞘と違って継ぎ目みたいなものがありまして。
ちょうど知ってる学芸員さんが通りがかったので聞いてみたところ、補強なのだそうです。
古い白鞘はのり部分がはがれてきてしまうのだそうで。
リボン状の材料を、ぐるりと糊で貼ってあるようです。(正確な素材は忘れました。竹か何かだったような)
最近は、それよりもひも状の素材を巻いて補強するのだとか。(今回、それを外してから展示しているとか)

また、今回の展示では、普段展示機会があまりなく、写真すらないものも多数あるのだとか。
もし、好みの刀があって、それが名刀図録にも載っていないような刀であれば、しっかりと目にやきつけつつ作品名を控えておいて、「また見たいです」のリクエストだしたほうがよいかと。


ということで、今回の感想はこの辺で。
どうせまた行くので、何か書き忘れがあればまた改めて記事にすることにします。
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