とある歴クラ見習い審神者の備忘録

調べたこと・面白かったものと、自分が調べるときにあったら便利だったなと思うまとめを置いておく場所

週刊日本刀1号をおすすめする

デアゴスティーニ分冊百科 週刊日本刀の第一号を買いました。

専門書と比べたら粗いです。でもこの本が競合するのは、これまで粗製本が乱造されてきた刀剣読み物系統かと思います。
それと比べたらまだ信頼度は高くて、刃文を浮かび上がらせた刀の精細な写真が収録されている。
今後も同程度のクオリティを保ってくれるのであれば、充分な価値だと思います。



個人的な基準だと、信頼度5~6割くらいのラインです。
同じ基準で、専門書だと7割~9割、以前記事にした初心者向けおすすめ本で6~7割くらいの信頼度。
(粗製本はもちろん0)
waterseed.hatenablog.com


これまで、読み物系での有名どころだと福永酔剣氏の本がありました。
氏の博覧強記ぶりはものすごいし、元資料の情報も書いている話が多かったので、出元をたどれるという意味で価値ある本です。
ただ、氏の本は、歴史事項に対して史料批判足りてない傾向があって、あんまり信頼度上げられないものでした。
粗製の本だと、その福永氏の本に更に枝葉を茂らせたりしてるので、なかなか目も当てられない状態だったり…。

更に、刀剣系って、「このシリーズで言ってることならまず信じてよい」といえるほど確実な本もない状態なわけで…。
主流説みたいなのはあっても、厳密な部分を見ると論者によって言ってることが微妙に違って、しかもよく読まないと違いが見えてこなかったり…。
(先人と論がどう違うのか書いてほしいところ…)
で、今有効な諸説と、さすがに古すぎて排除すべき諸説のラインがわかりづらかったりするのですよ。
何か一つの記述を見たときに「正しい」「間違っている」と、正直簡単には言えない状況なのが難しいところだと思います。
また、事実関係が確認できるレベルの色々がある話と、伝説的な記述各種しか材料がない話がごっちゃにまざっていたりとか…。

今回の週刊日本刀は、旧説や伝説、俗説も混ざっているとはいえ、ライト層が望む情報をわかりやすくまとめ、新しい研究成果についてもある程度示しているという意味で、読み物系としては比較的いい本に分類してよいと思います。

写真も、今回の目玉である「刃文まで写した刀の写真」以外にも面白いの載ってますよ。
刀装具ぎゃらりいとして生田享子氏の署名記事で、名品刀装具が数点、二倍くらいに拡大した写真含めて掲載されていたりとか、作刀の科学として刀身の顕微鏡写真が載ってたりとか。

先行販売版がぼろぼろだった話も聞いていますし、厳密にあらさがししだしたらいろいろ出てくるのも承知の上で、トータルではよい本としてプレゼンできる本だというのが私の所感です。
ぜひとも二号以降も、今のクオリティを保っていただきたいところです。

…とはいえ、これをベースとして真面目に諸説比較とかしてつつき倒すのも、それはそれで価値があると思うなど。
今書きかけの原稿がひと段落ついたら、wikiを立ててトピックごとの異説とか集めてもいいかなと思っております。
(ただし、二号が拍子抜けだったりしたらちゃぶ台ひっくり返しにかかりますが…)

記事一覧(分類別) - とある歴クラ見習い審神者の備忘録