とある歴クラ見習い審神者の備忘録

調べたこと・面白かったものと、自分が調べるときにあったら便利だったなと思うまとめを置いておく場所

お能の予習資料と審神者&マスタ―向けピックアップ

お能を見に行こうと思っても、あらすじと謡の現代語訳はthe能ドットコムにあるのですが、それだけだと実際に見に行ったときに「今どこの場面だっけ?」ってなりそうでためらったことありませんか?

というか私はなります。歌舞伎や狂言までなら初見でも何とか意味はとれますが、お能の謡は現代語訳を見た後でも聞き取れません。

 お能の台本にあたる謡の本は、実は普通に売ってます。でも知らない人多いんじゃなかろうかと思ってます。私も大きな本屋さんでたまたま見かけるまで知りませんでした。

能狂言の本屋さん【檜書店】の、能・狂言の本棚→観世流・袖珍一番本 と進むと、演目ごとの小冊子を購入できます。お値段的にも薄い本くらいのものなので、購入しやすいかと思います。

 

ただ、ワンフレーズ調べてみたいというだけであれば、国会図書館デジタルアーカイブ内にも古い版のものがありますので、それを利用してもいいかと思います。大半が草書に近い字体なので、楷書に近い書体のものを探すのが大変ですが。(昭和版が見つけられれば大丈夫なはず)

(そして多分一文字だけは知らないとわからない。「い」の右に点が一つついたようなのは「候」です)

 

そしてたくさんある演目から気になるものを見つけるのって大変だと思うので、以下、審神者&マスタ―向け演目をピックアップしてご紹介。

多分気づいてないの他にもあります。

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山姥切の逸話を追いかけた話

引き続き、切ったのどっちだよな話を。
もちろん結論はでないですし、逸話自体が紹介されてるのはよく見かけるんですよ。
でも出典書いてないから追えなくて歯がゆい思いをしてる方いるんじゃないかなと。
多分、本当に詳しい方からみたら当たり前なことな気もするけど、素人調べだとたどり着くまでにだいぶ時間がかかったので、まとめておく意味はあるかなと思ってます。

まずは前提事項。
・山姥を切った刀について本科である長義のほうとする説と、山姥切国広のほうだとする説がある。
・本科を所蔵している徳美には、「山姥切」の名につながる史料はない
さくっと検索して出てくる内容ってこのあたりかなと思います。
あとは具体的な逸話の内容も、いつのまにか刀剣乱舞攻略wikiに載ってますね。


ひとまずめちゃくちゃざっくり書くと、山姥切国広のほうが切ったという話は主に福永酔剣氏の御著書、本科のほうが切ったという話は、主に佐藤寒山氏の御著書に出てきます。
両氏ともにビッグネームですね。

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資料紹介『詳註刀剣名物帳』羽皐隠史著

国立国会図書館デジタルコレクションって、おもしろいもの色々あるのですが、量が多くてなかなか探すのが大変なので、審神者的におもしろいんじゃと思うものを紹介させていただきます。

ただ、注意事項がありまして、ここで公開されているものは著作権の保護期間が完了した、つまりはすごく古い本ばかりです。

歴史認識や事実関係の認識において、現代では否定された解釈をしているものも多いので、素直に全部受け取ってはいけません。

 

ひとまず、刀についてお勉強を始めると比較的早くに名前が登場する『享保名物帳』

刀の鑑定と研ぎを行う本阿弥家が、徳川吉宗に献上した名刀リストです。

これに羽皐隠史氏が解説を付けた本がデジタルライブラリーにあります。

詳註刀剣名物帳 : 附・名物刀剣押形 - 国立国会図書館デジタルコレクション

名物帳は写本によって掲載数が違ったり、記載順が違ったりしますが、今村本と著者が所持していた本をもとにして書いている旨が序文に書いてあります。

各章、著者による刀工の解説(字下げ&小フォント)→名物帳の記述(大フォント)→記述内容に対する著者の解説(字下げ&小フォント)という構成になっています。

逸話や伝来が書かれているものもあれば、刀身の特徴しか書いていないものもありますが、一度は読んでおくとおもしろいんじゃないかなと思います。

所持者のところは名物帳が書かれた頃の所持者です。ちょっと注意が必要なのは、「御物」という言葉。今では皇室御物に対してだけ使いますが、この本の中での表現は、将軍家の所蔵品に対して使われています。

(名物帳の記述部分に著者の手が入ってるかどうかは知らないので、ちゃんとした調査をするには調べなおしたほうがよいと思うんですけど、楽しみで読む分には充分だと思っています)

 

目次はおおざっぱなものしかないので、登場する刀について列挙しておきます。

数字はコマ数です。

基本的に旧字は現代的な字に改めたつもりですが誤っていたらすみません。

刀の名前のところが小さい文字で二列に書いてあるものが複数ありましたが、宗三左文字のところの書き方から、列挙なのだと判断して括弧書きにしてあります。

 

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鯰尾藤四郎の記録に該当しそうな逸話を調べた話

今回の話、まじめにまとめたものは去年、天下人の城応援団記事として書かせてもらったのですが、発表の場が場なので私自身が思ったことは極力書かないようにしたり、本筋である「展示品の紹介」から外れるようなことも削ったりしてまして…

要は、そのあたりのことも含めて書きたくなりました!

tokugawa-shiro.com

 

去年の記事内にも書きましたが、今回の話は「歴史と呼ぶことはできない、ロマンの範疇の話」であることはご了承ください。

見つけた逸話は、史料的価値が低いとされるものであり、またそもそもの発端である「尾張家の記録」も、史料的にどうなのか、私は知らないからです。

 

…と書いても、歴クラ見習いになる前の自分なら意味がわからなかった自信がありますので、過去の私と同じような方々に向けてもう一段解説を。

歴史史料の類は、そこに書かれているから正しい内容である、とは限りません。

離れた場所で書かれたものや、時間がたってから書かれたものであれば伝言ゲーム的な間違いがあるかもしれません。

戦略的な理由で嘘を書いたり、現代の履歴書の如く、小さな出来事を水増しして書いたりしていることだってあります。

なので「史実である」ことを主張するときには、その元ネタの確かさを検討しないといけないわけですね。

(確かさが低い場合から常にNGというわけではなく、その場合他の資料と合わせて妥当性があるからOKとするようなこともあるようで…細かい基準は専門の方におまかせします…)

 

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ここに至るまでの話

セツカといいます。
興味を持ったジャンルはひたすら調べたくなるタイプのヲタクです。
が、ヲタとして過ごして20年ほどたつものの、刀剣乱舞が初めての歴史ジャンルです。

はじめは歴史まで手を出すつもりはなかったんですよ。
元々神話伝説と民俗系を追いかけていた人間なので、それと同じレベルで「事実とは呼べなくてもそういう言い伝えがあるもの」として逸話だけ追いかければいいかなと。
たまたま徳美に行ったときに聞いた千田嘉博先生の講演と、学芸員の原史彦先生のギャラリートークのおもしろさにやられてすっかり落ちました。
原先生は、「村正伝説の研究発表をされた先生」と書いたらぴんとくる方もいるんじゃないかな…?東博の末兼先生と同系統の、ぶっちゃけ系トークが楽しい先生です。


そして私、定期的に文章を書きたくなるタイプでもあります。

去年、「天下人の城応援団」として色々書かせていただきました。
徳美の企画展に対して、有志が盛り上げよう、という趣旨の活動だったのですが、関係者を核として有志が集まる形式だったので、本題から外れるからと自重した部分もありまして…そのあたり個人的にもうちょっと書きたいなというのもありまして。
(あ、もちろん私自身の立場は有志の一人です。)

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