とある歴クラ見習い審神者の備忘録

調べたこと・面白かったものと、自分が調べるときにあったら便利だったなと思うまとめを置いておく場所

大正時代の刀剣擬人化

資料探し中にちょっと面白いものを見つけまして、個人的メモくらいのつもりでそのことについてつぶやいたところ、だいぶRTされまして…

ということで、今回のテーマは刀の擬人化。
ただし、ゲームの話ではなく、大正の頃の刀剣雑誌のお話です。

まず最初は、『刀剣と歴史』32号~34号(大正2年5月~7月)掲載の『怪談夢の聞書』というお話。
ここでいう怪談は怖い話ではなくて不思議な話のほうですね。
著者は青梯氏。
34号を見るとまだ続くようなことが書いてあるのですが、簡単に探した感じだと見当たらなかったです。
(あくまで本筋は別の調査なので簡単にしか見ていませんが)

隣の部屋からひそひそ話がするので泥棒かと思ってみたら声は刀箪笥の中からである。
さては刀の霊魂が抜け出てしゃべっているのだろうと思って聞き取って書いてみたよ、という体のお話です。
語らっている内容は、その作者の刀について当時一般的に言われていたと思われる内容や、中でも著名な作品についてですので、初学者向け読み物のような性質のものかと思います。
霊魂といいつつも人のような姿はしているようで「老人微笑て」「備前の長義と三池の光世らしい老人とが物語を初めた」と表現しています。
刀箪笥の中に入る大きさのご老人…ねんどろサイズかな?ちょっとかわいいかも。


もう一つは『刀の研究』6巻11号(大正9年11月)に掲載された『愛刀趣味の変遷』というエッセイです。
著者は水谷策次郎氏。
兼光の在銘品は地味で物足りない作品だが堅実である、というようなことを述べた後、刀の印象を、どういう服を選ぶ人物かにたとえて表現しています。
こちらは原文のままでもひっかからず読めると思うので引用形式で。

一文字や光忠はお召の着物の下に縮緬長襦袢を着た男である、
国俊、国綱は黒縮緬の紋付を着た男である、上品でも何となくにやけて居る、
正宗、義弘の類は大島の三枚襲を着た男である、男らしいが之も何處となくぞろりとして居る、
助広直政はモーニングコート、国広はフロックコート
繁慶は縮緬の浴衣、忠吉が背広服、村正は印袢纏
康光、盛光が銘仙といふ中にあって、兼光、近景、元重は久留米絣のごりごりしたものを着て居る感じのするものである、
若し夫直胤を近頃流行の絹大島とすれば水心子は染絣の類か、久留米絣の惨として奢らざる風格の古武士に愛せられるのも又宜なるかなである

この、それぞれしっかりキャラ付けされている感!
人の考えることってあんまり変わらないなと思った次第です。

ここに書かれた中だとお召、紋付、モーニングコートフロックコートが礼装ないし略礼装くらいのラインですかね。
三枚襲も形状的にはフォーマルっぽい気がするんですが、後半で出てくるほうを絹大島と呼んでるからには、先に出てくる方は本当に紬のほうの大島なのかな、そうなると完全にデニムみたいな扱いの素材だしな、と悩ましいです。

カジュアルからフォーマルまでのこの服装、RT先で実物追いかけてる勢に同意されてる部分多数あったので、そのあたり詳しい方には何かわかるものがあるのかなと思うとちょっと悔しいんですが、皆様のイメージはどうでしょう?