とある歴クラ見習い審神者の備忘録

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やっとかめ文化祭「徳川慶勝が見た幕末と尾張」徳川美術館「源氏物語の世界/徳川慶勝の明治維新」

やっとかめ文化祭の寺子屋企画「徳川慶勝が見た幕末と尾張」を受講してきました。
目指せ高須四兄弟の大河ドラマ化!という意気込みのものなんですが、高須四兄弟って誰だと思う方のほうが現状、残念ながら多いですよね。
四兄弟の中で世間的に知名度が高いのは、会津容保公と桑名定敬公。新選組の上司的な位置づけとして知っている方も多いかと思います。
どちらも高須松平家という尾張徳川の分家の出身なのですが、さらにご兄弟にお二人、大名となった方がいまして、それが尾張十四代慶勝公、十五代茂徳公(のちに一橋家当主)です。
この四人を高須四兄弟と呼んでいます。
その生涯が、なかなかドラマチックでして…
今回の講座は、講師×2が「高須四兄弟の大河ドラマ化への野望を語りつくす」という趣旨ですが、それを聞いたとき、確かに題材としてぴったりと思いました。



講師のお一人目は、小説家の奥山景布子先生。小説『葵の残葉』で高須四兄弟を題材とされました。

えっとごめんなさい…実は読みたい気持ちはあるものの、まだ読めてません。(そしてもうしばらく読めません)
全く別口で、自分自身が慶勝公のお話書いてる最中に『葵の残葉』が出たので、うっかりすると影響されちゃいそうだなって思いまして…。
(二次なので影響受けてもかまわないはずといったらそうなのですが。でも自分のお話のリライト終わったら、絶対に読みます…!)
同じ理由で城山三郎氏の『冬の派閥』もまだ読めてません…。


そして講師のお二人目は、徳川美術館が誇るマシンガントーク、原史彦先生。
村正伝説の論文や、しかみ像の論文を書かれた先生です。
いつもの毒舌トークはこの日はちょっと控えられてました(笑)

講演類の詳細レポは、天下人の城展のときに仲間がお叱り受けて以来避けてたんですが、今回は条件つき(ハッシュタグ大河ドラマ高須四兄弟」をつけること!)で写真のSNS掲載OKという発言もあり、ひろめてなんぼな件と認識しましたので、詳細目にレポします。

内容としては、大河ドラマの題材として見た場合のアピールポイントと、奥山景布子先生による50話分の構想に原先生が解説を加えていく形でした。

レジュメベースでなく記憶ベースで書きますが、アピールポイントとして

  • ( 殿様在住地だけでも会津、桑名、尾張、加えて東京と京都と)広いエリアが物語の場面として登場する
  • 庶民の感覚との対比を描ける
  • 兄弟でありながら敵味方に立場が分かれてしまう
  • 歴史上の有名人を脇役に出せる
  • みんな大好き宗春公も過去の因縁話として出せる

こんな感じのことが上がっていました。

庶民の感覚の話は、私全くその視点がなかったのであれなのですが、黒船来航などでどたばた大騒ぎしていたのはあくまで士分であって、庶民はそこまで大騒ぎするわけでもなく、江戸時代が続くと信じて平和に暮らしていたのだ、というようなお話でした。

兄弟の立場、会津公と桑名公は新選組上司ということで会津若松の戦いとか、函館戦争とかそちらの方にいっているのですが、尾張藩は実は早々に新政府側として動いておりまして…。
でも兄弟に対して不仲とかそういうことではなく、後には助命に回られております。

有名な人物を脇役に、とだけ書くと、この時代ならまあそうでしょみたいにとらえられかねないんですが違うんですよ!
功績部分は他の有名人のものにされがちなんですが、安政の大獄の始まりのところ、井伊直弼に抗議しに行った中に慶勝公(当時のお名前は慶恕公…だったと思う)が入っていますし、第一次長州征伐をうまいことまとめあげたのも慶勝公と尾張藩によるものです。あと鳥羽伏見の戦いの後江戸城無血開城への地ならしもこの方。東征軍が進む前に道中を勤王に固めたのです。これがなければ江戸よりはるか手前で旧幕府軍と東征軍の衝突が起きていたでしょう。
ということで、歴史の重要事件にがっつりからみながら、有名な人物を脇に持ってこれるのです。

宗春公、一般には「暴れん坊将軍で悪役にされてしまった人」のイメージがたぶん強いかと思います。
吉宗公の経済緊縮令に対して、それでは経済がまわらないということで、むしろお金を使うように取り計らったため、日本各地はさびれたものの名古屋だけ好景気という状態になりまして。
名古屋ではとても人気のある方です。
(私元々三河の民なのであまり実感ないですが…。三河尾張は言葉も文化も歴史観も違うのです。尾張の民は三英傑を押し、三河の民は家康公を押すのです。)
で、誰かわかった後は、なんでそれが幕末の話と絡むの?となるかと思うのです。だって江戸の中頃の人ですからね。
でも、慶勝公の話をするなら尾張藩の財政の話をしないといけなくて、その根っこを語るには宗春公の時代までさかのぼらないといけないのです。
(このあたり講座では葵の残葉80pを見てね、でとどまってたので詳細解説はなかったのですが)
慶勝公ちょい前あたりの財政の話はあんまりおもしろくはないものの、去年天下人の城応援団で記事を書かせてもらいました。
今だから言うけど、「あまり言うと尾張家の威信が」とか原先生が言うから、表現をソフトにソフトにするよう心掛けた文章です。めちゃくちゃソフトになったのです、これで。
tokugawa-shiro.com

大河としてのアピールポイント説明のあとは、奥山景布子先生が用意してきた「ドラマにしたら50話、どういうふうに割り振るか」の資料を片手に原先生が歴史解説。

残念ながらこのあたり、今一般流通している歴史の本でしっかり扱っている本はないと思います。(自分めちゃくちゃ探したのです…)
でも今まさに蓬左文庫で開催されている企画展「徳川慶勝明治維新」が、高須四兄弟と、特に慶勝公のことを特集しています。
入ってすぐに、黒字に水玉模様のめちゃくちゃポップな大小拵が飾られていますよ。
(正確には石首魚石入蝋色塗拵なんですが、水玉にしか見えなくてちょっとかわいいです)
更に、今回の企画展に合わせて、過去の図録も再販されています。
これ、めちゃくちゃわかりやすいですよ。鶴舞図書館の郷土本コーナー通いつめましたけど、慶勝公については郷土顕彰色がかなり強い本が多くて、どこまで信じてよいの?となりながら読んでいたので…。
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更に年明けまで、姉妹機関の徳川林政史研究所の方が講師で、尾張の幕末をテーマにした講座がありますよー。
締め切りって案内出てないからまだいけるんじゃないかな?
平成30年度 新講座「江戸学講座「激動の幕末」」 | 講演会・講座 | 講座・イベント | 名古屋・徳川美術館


後一応、世間的に今のメイン展示扱いされているのが特別展「源氏物語の世界」
…うん、ごめんね。王朝文学ちょっと合わなくて。
版によって内容が変わっていくよという話とか、どういう表現に発展したよというあたりは面白いと思うんですが。
最後の部屋にあった「江戸時代における源氏物語現パロ」な浮世絵とかね。


あとなんか、日付限定で美術館来場者にアンケートをしているということでがっつりと回答してきました。
粗品といいつつ、素敵なファイルとちょっとユーモラスなぽち袋いただいちゃいましたよー。
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以上!
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